とよち

Open App

「WORLD BACK 」
第一章 囚人690番
「このハイエナ野郎!ぶっ殺してやる!おい!聞いてのんか!!」、夜の闇に赤黒く染まった裏街のレンガ塀にこだました声は、後に地響きのような45口径の銃声に変わった。
1、法廷と刑務所
「被告人に、禁固18年を求刑する。」そう言うと学生服のような法廷服の袖をヒラヒラとさせ、左腕の下にあったカベルを得意気に叩いて見せた。俺は裁判官と警察側を睨み付けるように見上げ、退出されられる時にもう一度振り向き意味ありげに笑みを見せてやった。
「囚人番号、687番!688番!689番!…おい、689番!おい!」、段々と看守の顔が真っ赤になってゆくのがはっきりとわかった。それでも見事なターコイズグリーンに染め上げた髪を少しも動かさないゴロツキは、囚人服のポケットに手入れ看守を挑発するようにヤニだらけの歯をチラリと見せた。そして「ぼくちゃん、好き嫌いをしちゃあダメだよぉ。番号は着いてても人間なんだぜぇ。あんたと同じ。」
「バキッ」と言う音が灰色をした刑務所の壁にこだますると同時に、 真横にいたゴロツキは床に倒れこんだ。看守が鼻から熱い息を出しながら、血の付いた官房をおもむろに投げつけ、怒り狂った肉食獣のような唸り声を上げている。「ぐあァァッ!!いてぇ、いてえよぉ!!クソッタレめ!!」。額をパックリと割られたゴロツキは泣きながら白い床を朱色に染めるほどにのたうち回った。「テメェと同等扱いすんじゃねえ!この出来損ないのチンピラ野郎が!警官をなめるとどんなめに会うかよく覚えとけ!!わかったらここから出ていって小さく丸まって自分のケツの穴に付いた糞でも舐めてろ!!」、そう言われても泣き止まないゴロツキ(今になっては転んで血が止まらず泣き叫んでいる幼児のようだ。)は奥から出てきた医療班に運ばれていった。「あんなガキ、死んでしまえ!!チッ!」、止まない悪態をつきながら看守は声を張り上げて私の番号を呼んだ。「690番!!」「はい!!」、私にもプライドはあるがあのゴロツキのようにはなりたくないので自分の出せる最大の声を、半ば泣きそうに鳴りながら看守にぶつけた。「ふんっ、次だ!」、多分私の声が少しでも小さかったら可愛がってやろうとでも思っていたのだろう。つまらなそうに看守は向きを返え、ドアを蹴飛ばした。
とよち
(明日は、「2、投獄」に続きます。)

後書き
こんなに長くて下らない作品のご視聴、本当にありがとうございます!明日は投獄されてからと犯行の詳細など書いてみようかなと思います!久しぶりにこのアプリをいれて、シリーズ物を書こうと決意したんですが、やっぱり物語は難しいですね!大体はエッセイを書いていたので。でも、引き続き頑張って書かせていただきます。できれば、暖かい目で見守ってくれると幸いです。これからもよろしくお願いします!

6/12/2024, 2:16:02 PM