是綴

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新章突入 / 終わりにしよう

「―――もう、終わりにしましょうか」
先輩がいつになく神妙な顔つきで俺にそう告げる。突然のことに面食らい、思わず胸がどきりと波打った。
「な、何を」
「おれたちの今の関係と現状を、です」

先輩と俺の関係と現状。
職場での先輩後輩の形を保ちつつも、波長や好みが合うということで、お互い同僚よりも絡む頻度が多い相手。
なんなら今週は4回外食し3回お互いの家に泊まっている。
つまり、仕事仲間というよりほぼ「友人」だ。
下手したら、「友人」よりも深い関係かもしれない。
居心地としては―――かなり良い。良かったはずだ。

「……なるほど。先輩は俺と、どうなりたいんです?」

心なしか声が震えてしまう。そんな俺の様子には気付かずに、先輩は一拍置いて―――答えた。

「友人から『大親友』くらいにはなってもいいかと!」

先輩は、ぱっと花が咲くように笑う。
……そういうことね。それなら「終わり」というか、「レベルアップ」というか……

「ついでにルームシェアなんかしてもいいんじゃないかと!」
「いきなり勢いつきすぎでは?」
「けど家賃生活費諸々、折半でお得ですよ」

きみ、お得なの好きでしょう。
そう言って、先輩は朗らかに俺の顔を覗き込む。

うーん、乗った。

7/15/2024, 11:30:59 AM