一尾(いっぽ)in 仮住まい

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夜、絵の具の群青色を塗り込めたような、のっぺりとした夜。
味気ない孤独を慰めようと、僕はキャンドルを灯す。
薄ぼんやりとした火に手をかざす。小さいくせに熱い。指と指の間の水かきのような部分が透ける。人間を引っ張って薄く薄く伸ばし、光にかざしてみたらどんな風になるだろうかと想像してみる。
しばらくすると、風もないのにキャンドルの灯りが揺れる。
やぁ、君。久しぶり。そっちの暮らしはどうだい?
あの世のことはコンプラ遵守のため話せない? へぇ? あの世もなかなか社会的なんだね。
この世の中への嫌気ではち切れてしまった君と、僕はこうして交信する。
このコンタクトのことは、誰にも話したことはない。
僕はリアリストであって、オカルト信奉者だと勘違いされるのは真っ平だからだ。


テーマ; 揺れるキャンドル

12/23/2025, 2:24:25 PM