信号
夜シフトの帰り道、霧に包まれて信号機が現れた。
広域農道の一本道で、どうしてこんな場所に……と訝りながら赤信号で停車したら、広がる田圃の右手からたくさんの狐火が渡ってくるのが見えた。
ぽっぽっと赤く灯った火が一列に並んで、車の前を横切って行く。
最後の火が渡りきると、信号機はふっと消え、代わりに立派な和装の男が立っていて、深々と頭を下げた。
私もフロントガラス越しに会釈を返し、静かに車を発進させた。
どうやら狐の嫁入りに遭遇してしまったらしい。
スマートに回避させてくれて助かった、今年は豊作だと良いな。
9/6/2025, 1:40:19 AM