お金より大事なもの(オリジナル)(異世界ファンタジー)
「ラッツさんはお金より大事なもの、ないんですか?!」
ユーズにいきなり喧嘩腰でそう言われ、ラッツは目が点になった。
「へ?急にどうした?」
「どうしたもこうしたもないです!ラッツさんお金にガメついですよね」
確かにその自覚はあったが、お金に困った事のある人なら誰しもこうなると思う。
「人聞きの悪い事言うなよ。何をするにもお金は大事だろ」
「だからって、ほぼ全財産受け取ったらしいじゃないですか」
その発言で、数日前この街で受けて解決した依頼の事らしいと理解した。誰から何を聞いたやら。
ラッツはため息をついた。
「そりゃ依頼人が設定した金額だったからな。後から金ないとか言って値切ろうとしてきたから断っただけ。悪いのはあっちだろ」
ユーズは当初の勢いを失ったが、まだ不満があるらしく、小声でブツブツと文句を言った。
「そうかもしれませんけど…生活が立ち行かなくなるくらい払わせるなんて」
「それこそ、依頼のブツが金より大事なものだったんじゃねぇの?知らんけど」
ユーズを完全に言い負かし、ラッツは続けた。
「そもそも、お金より大事なものって、いくらを想定してるんだよ。金額によるだろ。1ピケ(10円)より大事なものなら山ほどあるけど、1000シーニ(1000万円)だったら仲間くらい簡単に裏切るかもしれん」
隣で話を聞いていたアレスが目を丸くした。
「1000シーニで?!」
「そこ?!大金だろ?!」
地方とはいえ王宮騎士だった彼は、高給取りだったのかもしれない。金銭感覚が違いすぎる。
同意を求めて見回すと、ネオが頷いていた。
彼とは貧乏人仲間だったようである。良かった。
「そういうお前らはどうなんだよ。金より大事なもの」
そう聞くと、アレスが即答した。
「私はいくら金を積まれようと、名誉と己の良心を重んじますね」
彼らしい、期待を裏切らない回答だった。
ユーズは少し考えていたが、
「私も…自分に失望する事や己の正義を裏切る事はしたくないです」
と、言った。聖職者らしい模範回答だった。
そしてネオは、じっくり考えて、
「俺は……家族」
と言った。
ラッツは目を丸くした。
ネオは故郷の里を滅ぼされて家族全員皆殺しにされており、今現在、守るべき家族はいないはず。
その話を知っているのはこの中でラッツだけなので、知らない二人は「家族!良いですね」「さすがネオさんです。お優しい」などとネオに話しかけている。
(あれ?それってお金が一番大事、になってしまうのでは??)
ラッツはネオを盗み見た。
ネオはぼんやりと中空を見つめている。
今は亡き家族の事を思い出しているのかもしれない。
何よりも大事なものだった、それを。
(それを言うなら俺も、か)
だから金より大事なものがないのかも。
ラッツは自虐の苦笑いを浮かべた。
3/8/2026, 11:16:02 AM