〇 秘密の標本 〇
彼は標本が好きだった
植物、虫、生物が好きなわけではなかった
ただただ、標本が好きだった
ある日、彼は「標本見る?」と聞いてきた
彼の部屋には標本が沢山あった
ホルマリン漬けだって沢山あった
その奥に大きな物があった
それに彼の手がかかった
人間の標本だった
美しいと思ったと同時におかしいと気づいた
笑顔な彼は「綺麗な子だったから」と話した
女の標本が綺麗にみえた
彼の笑顔は綺麗だった
「君は否定しないよね?」悲しそうに話した
しないよ絶対にしないそう誓った
けれど、一つ許せなかった
『 私を標本にして 』
咄嗟に声が出た
彼の口角はさらに上がった
私は一つの標本になった
彼の彼だけの標本になった
彼は標本が好きだった
植物、虫、生物が好きなわけではなかった
ただただ、標本を作るのが好きだった
私は彼に好いてもらいたかった
彼の秘密の標本になったとしても
11/2/2025, 1:22:54 PM