ミモザ

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夏の、暑い日だった

何も無い田舎の

誰もいない河川敷

夏期講習の帰り道、何故だか寄りたくなった

このまま自分は

ここに居続けるのか

勉強も頑張ってはいるが

自分が何をしたいのか、分からない

川が日差しを浴びてキラキラ光って、

セミは穏やかに鳴いている

ズボンの裾をまくって、川に入る

懐かし、川に入るのなんて何年ぶりだ

水の冷たさが心を落ち着かせてくれる

その時

楽しそうなことしてるじゃん、

と言い少女がやってきた

同じ学校の制服だ、顔は見たことないが...

私も混ぜてっ!と彼女は靴をポイっとほおり投げ

勢いよく水に入る

その勢いで自分の制服はビショビショに濡れてしまった

あははっと彼女は豪快に口をあけて笑う

何だか、全てどうでもいい

そう思えてしまった

その後しばらくはしゃいで、

帰り道に駄菓子屋さんでラムネを飲んだ

人生で、いちばん美味しいラムネだった。

...

...夢か、

暑さで目が覚める

日は傾きはじめていて、日差しがキラキラとまぶしい

わずかな風が風鈴をふるわせ、セミの音と調和する

何だか、懐かしい記憶だったな

今思えばあれが青春ってやつか、

もう戻ることはない、「遠い日の記憶」

縁側に腰をかけ、ぼーっと庭を眺める

喉が渇いたな、何か飲むか

そう思い、立ち上がろうとしたら

頬にひやっと何かが当たった

冷たっ!と当てられた方向を見ると、

変わらない、豪快な口を開けて笑った彼女がいた

「...ばあさん、冷たいって」

さ、飲みましょっとずいっと渡されたのは

あの日と同じラムネだった

キンキンに冷えたラムネが、喉を伝って

全身に冷たさを届ける

あぁ、何年たっても美味しい、

変わらない味。

あの日の青春がよみがえる。

彼女と飲むラムネは、格別に美味しいのだ。
























7/17/2024, 10:38:27 AM