『あなたに届けたい』
「やっと、君に届けられる」
男は悦びに震える手で、その小さな小包を丁寧に包んだ。中身は、彼女がずっと「欲しい」と言っていたものだ。
二人が別れてから半年。彼女は男からの着信を拒否し、居場所さえ教えなかった。
けれど、そんなものはどうとでもなる。男は彼女の新しいアパートも、新しい恋人の存在も、すべてを突き止めた。
「君はいつも、僕に『心』が足りないって言っていたよね」
男は独り言をつぶやきながら、真っ赤なリボンを結ぶ。
彼女が去り際に叫んだ言葉を、男は一言一句忘れていない。
――あなたには人の心がないのよ!
あんなに欲しがっていたのだから、きっと喜んでくれる。
男は、数時間前まで彼女の隣を歩いていた新しい恋人のことを思い出す。
あそこから取り出した、まだ温かく脈動していたソレも……
翌朝、彼女の家の玄関前に置かれた箱からは、甘い香りに混じって、わずかに鉄の匂いが漂っていた。
1/31/2026, 9:33:27 AM