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“失恋”


恋をする前から、失恋することが決まっていた。
流れと勢いと、少しのアルコールで気づけば恋心と折り合いをつける前にそういう関係になってしまった。

彼女はずいぶんとこういう関係に慣れているみたいだった。
いつもの強気な目元を、二人きりになるとまるで恋人に向けるかの様に柔らかく細めて見つめてくる姿に俺は何度も何度も恋に墜ちた。
それでも好きだ、と告げるどころかこの好意を少しでも漏らすことすらできなかった。

恋に堕ちるたびに失恋して、でもやっぱりどんな形でも良いから側にいたかった。彼女のトクベツでありたかった。
そう彼女に対して思っている男は俺以外にも大勢いて、そして彼女は決してその中から特別な人を選ぶことはないだろう。
今夜もまた慣れた様に部屋を出ていく彼女を見送って、俺はまた失恋をする。


6/4/2024, 9:54:24 AM