「ねー、もう帰ろ……何食ってんの?それ。飴?」
放課後を告げるチャイムがなってから、もう三十分は経っただろうか。
俺を待ちくたびれた友人が、机にしなだれかかるように顔を覗かせた。
「……ん〜……もう帰るよ。今食べてんのはあめ。」
間延びした返事を返して、鞄を手に取って席を立つ。
口の中で転がしたあめが歯に当たって、かろん、と軽い音を立てた。
「俺も食べたい。一個ちょうだい。」
友人の手のひらが、図々しく目の前に差し出された。
俺は軽く溜息を吐いて、鞄から飴玉の袋を取り出す。
「やりぃ。」
手の上に個包装の飴を2,3個乗せてやれば、彼は満足したように手を引っ込めた。
隣からビニールを破く音がして、それから、俺と同じように、口の中で飴を転がす音がする。
「そういやさぁ、アイツ大丈夫?お前仲良かったじゃん。ほら……あの……アマネ、だっけ?」
びく、と肩が跳ねた。
友人はなんでもない世間話のつもりだったのだろう。
だが、俺にとってはあまりに身近で、あまりにタイムリーな話題だった。
「……さぁ。仲はいいけどさ。アイツ元々連絡よこすタイプでもないし。」
アイツは、一週間ほど前から学校に来ていなかった。
教師が親に連絡を取っても、両親さえ居場所が分からないという。
親しかった俺にも当然聞かれたが、分からないと答えた。
「ふーん……今警察も探してんだろ?見つかるといいな。」
友人の声が遠く聞こえる。
口の中のあめは、いつまで経っても小さくはならなかった。
友人の飴玉を転がす音は、もうとうに止んでいる。
「……そうだね。アメ、どこいったんだろ。」
雨音。俺の親友。アメ、というのは、幼かった俺がつけたあだ名。
やがて始まった友人の愚痴をBGMに、俺は家にある大量の肉の消費方法を考えていた。今日も、夕飯は肉料理になりそうだ。
舌の上では、甘さのないあめが存在を主張していた。
テーマ:二人ぼっち
3/22/2026, 8:45:32 AM