『良いお年を』
「良いお年を」
「おい、もう年明けたぞ」
突っ込まれてバツが悪くなる。
はぐらかすように手で鼻の頭を掻いた。
「なんで年末に、良いお年をって言うんだろ」
「あ?」
「だってさぁー。良いお年って言っても、もうすぐ終わっちゃうんだよ?? だったら、さ……年始めに言ったほうがよくない?」
アタシが唇を尖らせてそういうと、幼なじみの彼は眉間に皺を寄せたまま腕を組んで「一理あるな」と言った。
「じゃあさ! 良いお年の謎を解こうよ!」
「正月から推理か??」
「いいじゃん、いいじゃん! アタシ、推理大好き!」
「はぁ……わかった」
ピョンピョン跳び跳ねて満面の笑みのアタシに対して、彼は呆れたようにため息を吐いて両手をあげて肩を竦めてみせた。
「そうだな……アレじゃないか?」
「なになに?」
「終わりよければ、すべてよし理論」
「おわ、おわわ?」
難しい言葉に90°ほど首を傾けてフクロウみたいになってしまったアタシを、彼は両手でアタシの顔を挟んで無理矢理にニンゲンみたいに直した。
「ニンゲン、生きていれば色々あるだろ」
「そうだね、なんか大変そうだよねー」
「……オマエは呑気で大変そうじゃないけどな」
「えっへん! お腹いっぱいなら、どこでも幸せなのが取り柄です!!」
自慢げに胸を張るアタシに、彼はケッとそっぽを向いた。いつもよくやる癖だ。これが堪らないってニンゲンもいるのだから、よく分からない。
「はいはい。また、だからさ……アレだ」
「なに?」
「暗示だよ」
「あんじ? なんの?」
「良いお年を、良いお年をーって言い続けて。あぁ、今年も色々あったけど、良い年だったなぁって思う訳だ。で、明日の事は知らん。また年末に暗示で良いお年だったって思う訳だ」
「へぇー。よくわかんない。ニンゲンって大変だね」
「そうだな。ほら、早くニンゲン起こしに行くぞ」
「はーい」
ニャーニャー。
飼い猫が二匹が遠くで鳴いている。
何を鳴いているのかは分からないが、とっても楽しそうだ。
あぁ、猫の鳴き声で目覚めるなんて、きっと今年も素敵な年になるだろうな。
そう思いながら、目を開けた。
「おはよう。待っててね、すぐご飯出すから」
「ニャーン!」
「ニャ」
おわり
良いお年を。
今年もよろしくお願いいたします。
12/31/2025, 9:54:58 PM