『心と心』
人間は誰しも心を持っている。そして、誰とでも心と心を通わせることができる。世間一般ではそう言われているが、俺は嘘だと思う。この世界で心を持っているのは俺と俺の彼女だけだ。そして他の奴らはロボットのようにプログラムされた動きをしているだけだ。だから俺と彼女は心と心を通わせられるし、他の奴らとは心を通わせられないのだ。
今日はそんな彼女から「大事な話がある」と公園に呼び出されていた。もう何年も付き合ってきたので、プロポーズでもされるのだろうかと思っていると、
「ごめん、待った?」と彼女が現れた。
「いや。で、話って?」と俺が聞くと、彼女は
「あのね……」と口ごもる。「何だよ。早く言えよ」と俺が急かすと、彼女は「私と別れて欲しいの」と言った。俺が唖然としていると、「貴方、私以外の人を全く人間扱いしないんだもの。ロボットだとでも考えてるみたいで怖いのよ」と言われる。俺は反論しようとしたが、口から出てきたのは言葉にならない言葉だけだ。「じゃ、そういうことだから。バイバイ」そう言って彼女は去っていく。この瞬間、通っていたはずの心はガラス細工のように砕け散った。
あぁ、所詮こいつもロボットだったのだろう。
心と心を通わせるなんてただの幻想だ。
俺はこの世でただ一人の孤独な人間だ。
12/12/2024, 3:31:54 PM