イカワさん

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目が覚めたら何も無かった。

ただ青かった。碧かった。蒼かった。

まず自分の姿を確認する。無い。手、足、体、それらがあるはずの場所は碧空に塗り潰されていた。

次に歩く、歩く、歩む。続く、終わらない青。爽やかな青。何も無いから歩み続ける。

足が疲れた気がした。…足はあるのか?

あ、………多分気の所為だ。進んでいないから。青から逃れられていない。

見えぬ体を抱きしめるようにして座り込む。風を感じた気がした。そもそもここは何処だろう。今までは…ベッド、部屋、医者、食事、風呂…日常だ。その筈だ。ならここは?死んだのか?死ぬなら白の方が良いのでは?青、何だ?何を知らせたいんだ。パラレルワールドか?

……いかにも非現実!そうか!これは夢なんだ!覚めるのを待っていれば良い。ぼんわりとした気分のまま空だと思われる場所の一点を見つめる。思考を研ぎ澄ます。何も考えなくて良い。

夢は覚めない。覚めない。覚めない。長い、永い、夢。起きろ自分。今すぐだ。

覚める筈は無かった。何故覚めない。平凡なのがいけないのか?刺激を求めるのか?奇怪な出来事が起こればいいのか!嫌、ボクならばグロテスクを求めるか!そうだろう?
お望み通り。

手をそっと首にかざす。と、手に力をぐぐっとかける。顔に血が溜まるのが分かる。呼吸がしにくい。が、辛うじて出来る。…駄目だ。息を止めなければ。……これがグロテスクか?血だ、血が必要だ。…目、眼球!そうだ!これを取ってしまおう。そうすればこの忌々しいアオともおさらばだ。何て良いアイデアなんだ!

左目の両端に指をずぶりと押し入れる。中は温かくて湿っている。眼球の裏側へと指を滑らせ、抉り取る。痛い。痛い。血が溢れる。顔の半分が温かい。

荒い息のまま上空を見つめる。鮮血が頬をそって滑り落ちる。

これで終わる。終わるのだ。

10/23/2024, 12:12:56 PM