風に乗って(オリジナル)
風に乗って聞こえてきた音がある。
耳を澄ますと、どうやら何かの曲のようだ。
楽器は笛、だろうか。
立ち止まり、目を閉じ、どこから聞こえてくる何のメロディなのか把握しようとした。
とたん、立ち止まったはずの足が、勝手に動き出した。
「え?」
軍隊の行進のように。
音の鳴る方に向かって。
自分の意思に関係なく。
やがて、長い人の列に合流した。
皆、困惑と恐怖の表情を浮かべている。
私の脳裏にも、皆と同じ想像が浮かんでいた。
(ハーメルンの笛吹き男?)
あれは連れて行かれて洞窟に閉じ込められる話ではなかったか?
何の恨みも買った覚えはない。
恐怖から列を離脱しようともがくが、全くビクともしなかった。
「誰か!助けてくれ!この音を止めてくれ!」
私は大声で喚いた。
そこで、目が覚めた。
夢だった。
部屋の窓が開いていて、昼間の爽やかな微風が、汗ばんだ額に張り付く前髪を揺らした。
隣の部屋から、子供が練習する笛の音が漏れ聞こえてくる。
(これか)
私は頭を抱えた。
妻に内緒で子供と約束をしていた。
テストで100点取れたらゲームを買ってやる、と。
そこまで優秀ではない我が子であったが、まさかの100点を取ってきた。
妻が禁じているゲームを買う約束を叶えるわけにもいかず、うやむやにしていた罪悪感が見せた夢のようだ。
約束を守らない事は、子供の教育上よろしくない。
仕方ない。妻に怒られよう。
私は観念したのだった。
4/29/2026, 1:40:38 PM