僕は妹に恋をした――。
だなんて、フィクションの出来事だと思っていた。美しい役者たちが、自分たちの血の繋がりゆえに葛藤する役柄を演じるからこそ、より映えるのだと。
自分は十人並の容姿だと自覚している。
不細工でもないが、美男子でもない。その自分の身に映画や漫画の中の話が降りかかってくると、苦笑いしか出てこなかった。
「兄妹でそんなことしちゃいけないのよ」
分かってる。分かってるよ。分かってるけどさ。
俺よりも激情的な妹がテーブルを叩いて、感情をあらわにした。
事情を知ってしまった両親の生温い目が何よりも痛い。俺たちは両親の目を揃って見ないようにした。
お兄ちゃんから何かないの、と母親が穏やかな顔で急かしてきた。
でも俺からは何も言えない。俺は妹と関係を持ったことを、後悔はしてないからだ。
(……マジでどこから話が漏れたんだろ)
あいつ? それともあいつ?
自分たちの落ち度を棚に上げて友達に責任転嫁する俺は、最低の自覚を持っていなかった。
2/3/2025, 2:44:27 PM