日が昇る前。そんな時に起きても、彼女は先に起きていた。なんなら着替えまで済ませている。
「おはよ。ね、私の服貸してあげるから着て。一緒に家出しよ?」
まるでピクニックに行こうとでも言うほど軽々しく、にこやかに笑って彼女は言う。
私は思わず否定した。
「な、なんでそんなこと急に……」
「あれ、覚えてない?前に話したでしょう、パラレルワールドって」
その単語が脳内の記憶を引き戻す。いつかの日に、私は彼女に全てを終わりにすると言って……あれ、どうして帰ってきているのだろう。
「私思ったの、場所が悪いんじゃないかって。ここから離れればいいんじゃないかって」
彼女は私の服を無理矢理脱がして、彼女の服を着せていく。されるがままの私に彼女は語る。
「それで、一旦貴女の家に行くけど、貴女は家の外で待ってて」
「え…どうして」
「どうしても、ね。よろしく」
かれこれしてる間に私の支度も整っていた。彼女は私の腕を引っ掴んで朝ご飯も食べずに外に出る。まだ空は薄暗い。
教えた記憶もないのに彼女は私の家に最短で辿り着いた。運動神経に自信はある方だけど、彼女の家からここはそれなりに遠い。それなのに、息急き切っている私と違って、彼女はため息一つつかずに私の家に入る。いつの間に鍵を持っているのだろう。私が寝ている間に盗んだのだろうか。私は仕方なく家の脇の歩道で座って待つことにした。
空を見上げると、折角昇った太陽を隠すように雲が流れてきていた。
【空を見上げて心に浮かんだこと】
お題が更新されるごとに進む物語No.8
7/17/2023, 4:03:40 AM