天蓋

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あぁ、また地元に帰ってきてしまった。

地元に帰ると思い出してしまう人がいる。
太陽みたいな人だった。明るく、あつく、燃えるような人だった。全てを照らす人だった。
私も、それに、照らされた。

中2、8月の始め、蒸し暑さのピーク。クラス数人で行った地元の花火大会。たまたま隣で花火を見たのが彼だった。
花火よりも彼を見ていたことを、覚えている。
中2、9月の終わり、そろそろ次の季節が顔を出す頃。担任から告げられる、突然の引っ越し。親の都合というオブラートで隠し通された理由は、誰も寄せ付けなかった。これも太陽みたいであった。
無論、私も何も聞くことが出来なかった。
けれども彼は最後まで笑顔だった。顔が曇ることなど無かった。
最後の日は晴れていて、クラスみんなでお別れ会をした、ような気がする。
この日を私は覚えていない。夏バテなのか、恋心に酔っていたのか、私には分からない。

彼のいなくなった次の日が雨で、教室の蛍光灯が切れたことは覚えている。

あぁ、あの花火大会でもう一度出会えたらいいのに。


『夏』

7/14/2025, 2:59:01 PM