大きな粒が頬を伝う。
手のひらを、服を、濡らしていく。
自分の涙腺はどうやら故障したらしい。ぼたぼたと流れて止まらない。袖で拭っても拭っても止まらなかった。
「……なんでお前が泣くんだよ」
呆れたような、悲しんでいるような口調だった。きっと彼は呆れたとか悲しいとか全く思ってないと考えているだろうけど。
どうしてなんて、私が聞きたい。
どうしてあなた、そんなに傷ついた顔をしてるのに平気だと思い込んでいるの?
「わからないよ」
くやしいとか、イライラするとか、寂しいとか、それらが全部当てはまりそうで、そうでない。だから、そうとしか答えられなかった。
「だから、そばで泣いてあげる」
隣に座らせて、肩に頭を乗せる。彼は少したじろいだけど、そのまま受け入れてくれた。
「……変な理屈」
「うっさい」
ぼたぼたと瞳から溢れる涙は彼の手も濡らしていく。流れる涙に比例して、彼の体の緊張が少しずつほどけていくのを感じていた。
【なぜ泣くの?と聞かれたから】
8/20/2025, 7:32:53 AM