『風に乗って』
幼馴染で恋人だった煌驥が亡くなって、もう3年が経つ。
最初は悲しんだ。1週間くらい学校を休むくらいには悲しんだ。
でも、そんな事を煌驥は望んで無いから。煌驥は、私に幸せになって欲しいって、そう願っていると思うから。
だから、私は立ち上がった。前を向き、1人でも歩く為に。
「煌驥〜聞いてよ〜。今日高校でさ〜」
そんな他愛も無い事を、煌驥の墓の前で話す。
煌驥が亡くなってから、私は欠かさず墓参りをしている。その時には今みたいに独り言を話したりしているが、やはり少し寂しい。
でも、私は生きていく。たとえ独り言で終わったとしても、寂しいとしても、私はここに来る。
『俺が死んだらさ、墓参りは来てくれよ?』
『勿論、絶対に行くよ』
それが、私と煌驥が交わした約束だから。
「でも、やっぱり寂しい物は寂しいよねぇ」
涙が、頬を伝う。心に秘めているはずの言葉が出てしまった。
「でもさ、私は煌驥の分もちゃんと生きるから。だから、見てて。私がそっちに行った時、この人生は良い物だったって、言えるようにするから」
この言葉が、煌驥に届いているといいな。この、風に乗って。
最後に精一杯の笑顔を墓に向け、踵を返し、帰路に着く。
「ああ、ずっと見守っているさ。だから、小夜は笑っていてくれ」
「え……?」
そんな言葉が、私に届いた。この、風に乗って。
4/30/2024, 3:45:30 AM