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私は今、人1人分の日陰にいる。

それを作り出しているのは、
交差点の歩道に生える細い電柱だ。

歩車分離式で、
少し待ち時間の長い信号。
焼けたアスファルトから立ち上る熱気。
信号待ちの車に反射する陽光。
容赦なく照りつける太陽が、
殺人的とも言える熱量で襲いかかってきている。

この細い電柱は、
自身の片側を陽に焼かれながら、
それらから身を挺して私を守ってくれている。

しかし、私は行かねばならない。
守られてばかりでは、前に進めないのだ。

短い間だったけど、
ありがとう、電柱。

鳥のさえずりを合図に、
私は電柱の影から1歩踏み出し、
灼熱の太陽の下にその身を晒しながら、
今日も職場に向うのだった。

8/26/2025, 3:12:22 AM