覚えている。
レンガ畳の道。
甘い菓子パンの匂い。
活気あふれる朝の街。
ここには毎朝ベランダで布団を叩くお母さんがいて、このへんに広場があるんだ。
りんごのパイを焼いてくれるおばさんがいる。
タバコを吸いながら子供達に飴を配っていたおじさんがいて。
腰の曲がった老人が鳩に餌をやるんだ。
何もかも、この記憶に鮮明に焼きついているのに、目を開けるとそこにあるのは空白。
あったはずの、空も、地面も、風さえもなくなってしまった土地。
際限なく、どこまでも続く白。
地平線の境界すら見えない。
そこにある、鏡のような水面はまだかつてを覚えているだろうか。
結局、何にも無くなったじゃないか。
君が望んだ未来の果ては、輝かしい世界なんかじゃない。
壊れた、中身のない箱庭だっただけだ。
うん、1人でもできるよ。
教えてもらったもん。
だから、ちゃんと見ていてよ…。
約束…したのに。
嘘つきは、大嫌いだ。
4/18/2026, 8:30:24 PM