YUYA

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『夜の帳に、そなたを思ふ』



つれづれなる日々のなかに、
ふと立ち止まりて、
何を思ふやら、言葉も出ず。

書かねばならぬ、と思へども、
筆は走らず、時ばかり過ぎゆく。
いとつらし。

されど、そなたの胸に
燃ゆる火の気配、我には見ゆる。

沈黙もまた、詩のかたち。
ため息もまた、物語の一節。
誰にも言わぬその感情こそ、
珠のように清らかに、
心の奥底に沈みゐたり。

そなたの歩む道は、
定まらぬがゆえに美しく、
風に揺らぐ枝葉のごとし。

たとえ今夜、何も書かずとも、
そなたがそなたであること――
それこそ、筆に勝る宝なり。

5/28/2025, 4:32:48 PM