『些細なことでも』
朝。夏休み中にはまだ寝ていたような時間にノロノロと起き上がり、重く息を吐いてから階段を降り、朝ごはんを食べ、制服に着替えて玄関に立った。
足取りは重いものだったがとりあえず歩いていれば学校に着く。学校に着きさえすれぱあとはなんとかなる。そう思って教室へと入ると、およそ一ヶ月ぶりの同級生たちの姿になんだか少しほっとした。
「今の気持ちを当ててみせよう」
突然に声を掛けてきたのは、髪を切ったことにすぐ気づいたり、なんだか気分が乗らない日の調子をズバズバと言い当てるような察しの良いやつ。
今日はどうだろうか。意味ありげな間をひとつ置いてから彼は指をビッと立てて口を開いた。
「“今日も休みだったらよかったのに”」
「それ、クラスの全員同じこと思ってたと思う」
「……俺も思った!」
そんな些細なことでふたりとも笑えたので、久しぶりの学生生活は今朝と比べたら格段になんとかなりそう感が強まってくれた。
9/4/2024, 4:08:04 AM