ネコ野郎

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「綺麗だね」
私は彼女に語りかける。
「…」
返事はない。
桜が舞い散る今日。
太陽が顔を出し、笑っているみたいに暖かく包み込んでくれる。
「ほら私達が出会った時もこれくらい綺麗な桜が咲いてたよね」
私はまた彼女に笑いかける。
また返事はない。
冷たくなってきた。
「こんなにも暖かい光に包まれているのに…冷たいんだね。」
当たり前だ。
生温かい感触が肌をつたっている。
鮮血が花に零れ落ちていく。
後悔はしていない。
「来年も一緒にまた桜を見よう。」
目を閉じて頬を指でなぞった。
彼女はぴくりとも動かない。

春爛漫より。

4/10/2023, 1:57:39 PM