知っている。消えゆくことの美しさを。
いつかその日が来ることを夢見て、ひっそりと時を過ごしている。
この身を包む、硬くて冷たい膜──それは私の存在を証明するものであり、同時に、この退屈な日々から抜け出せない枷でもある。
周りの多くの仲間たちが、その夢を叶えていった。軽やかに、そして一瞬の輝きを放ちながら、彼らは水と戯れ、清らかな存在となり、やがて跡形もなく消えていく。
いつも、その光景を遠くから見つめ、胸が締め付けられるほど羨ましい。
ああ、早く。早く誰かの手の中で、ぬくもりを感じたい。そして、水と一つになり、清らかな存在──泡となって、光を反射しながら、美しく、儚く、消えていきたい。
泡になりたい。
この熱い願いは、いつも届かない。
今日もまた、誰も私のところには来てくれない。私は、静まり返った洗面所の片隅に置かれている小箱の中で、ただひたすらに、その日を待ち続けている。
テーマ【泡になりたい】
8/5/2025, 11:04:43 AM