最近、この星、この国では
とんでもないことが起きている
人々は苦しみの声を上げ、
その引き裂かれるような苦痛に倒れる人も多い
───そう、季節との別れだ。
ようやく麗しき春に逢えたと思えば
彼女はあっという間に儚くなってしまって
我こそが王だとでも言いたげな
彼の夏の苛烈さに襲われる
かと思えば
行方をくらましたはずの冬の君が
ひょこりと顔を出して悪戯に笑うのだ
秋は夏と冬の獰猛な牙に弱り果てて伏せりがちで、
もう駄目かと諦めようとすれば突然
起き上がってにこにこと散歩に出掛ける
この頃四季はどうにも
慌ただしい日々を送っているらしい
サッと現れては
サッと消え
生まれたと思えば
死んでゆく
もう少しここにいてくれ、と
頼む間どころか、
その願いを心に宿す暇もなく
彼らはすぅと去ってしまう
心地よく戯れていたのに、
彼女をおしのけて現れる
そして去ってしまった彼女が
当たり前のものではない
美しいひとなのだと言外に示す
もうどこかに行ってくれと願うのに
しつこくまとわりついて困らせて
そろそろ慣れて心地良さを感じた頃に
ふっ、と突然姿を消してみたりする
もう少し落ち着いて、そこにいてほしいと
まだ君と語らっていたいと願うのに
全くつれないひとたちである
「突然の別れ」
5/19/2024, 2:43:43 PM