ハイファイ

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『君だけのメロディ』

あの子が泣いていた。
僅かに開けたドアの隙間から微かに声が聞こえた。覗き見ると皆から好かれる人気者がいた。人の前で明るく振る舞うあの子が、今は部屋で1人、声を押し殺し泣いている。辛い、辛いと呟いた。

どこか自分とは違うと思っていた印象が崩れていく。そこで、誰からも好かれるあの子の思いを初めて聞いたことに気づいた。

蓋していたあの子への思いが顔を出す。いつしかヘドロのようになり、友達として相応しくないと抑え込んだ感情だ。

可哀想だと思った。いい気味だとも思った。
ただ、聞こえたあの子の泣きごとに、仄暗い優越感を抱いたことは確かだった。

6/14/2025, 8:32:03 AM