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#スマイル

―――

彼奴の笑顔が好きだった

よく言えば澄まし顔
悪く言えば、死んだ魚の目のような。

そんな彼奴が、甘味を前にした時だけは
ふわっと、花を綻ばせるのだ

最初は、物珍しさからだった...のだと思う
けれど何時しか、そんな彼奴の顔が見たくて
紙袋を提げ、彼奴の元へ足を向けるようになった。

甘いものが得意でない事が重なって、同じ様な物を渡す事が多いのに。
普段の態度が嘘のように、素直に礼を言われ驚いたのは最近の事の様に思い出せる。


「んーっ!」と、聞き慣れた声に思考が戻された
目の前には、フォークを片手に花を咲かせる彼奴

知らない味じゃないのに
本当、美味しそうに食べるものだな

それを見る為に甘味を渡す自分を棚に上げながら、湯気立つ珈琲を口にした。


2/8/2026, 11:49:59 AM