髪弄り

Open App

これがいい、あれがいい。
アクアリウムみたいに映る、無限の未来を眺めながら、多くの人が期待に胸を躍らせている。
「俺は将来、弁護士になるみたいだ」「私はお金もちと結婚するって」
「僕は…、何かの運転手になるみたい」
暗闇で何かを握って、アクセルを踏む私。窓辺からは、青赤と明滅する星々がきらめいていた。
「なんだ、やっぱおまえは大したことないな」
「…そうなの?」
小学生に過ぎなかった私には、実感がなかった。映像だけが写されても、自分がそうなってる未来など想像がつかず、どこか別の世界に迷い込んだようだった。

あれから十年後、
私は宇宙を旅している。
同級生も未来に達したようだけど、弁護士はどこも飽和状態で就職が大変。女の子はどうも幸せそうにみえない。なんでも、軽い監禁状態だとか。

だからといって、私が幸せかと言われたらそうでもない。ただ、生きることはできている。

みんなは未来を手にしたけれど、それで本当によかったのかしら。

『もしも未来が見えるなら』

4/19/2023, 10:44:36 PM