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お題:溢れる気持ち

隙間から覗き込む太陽の光で目が覚めた。
まだ見慣れない天井が目の前に広がっている。

僕は今、一人暮らししていたアパートにヘリが墜落するという未だに夢か現実かわからない境遇に置かれている。
そのため、彼女の家に住み着いているのだった。

寝ぼけ眼を擦りながら普段着に着替え、リビングに行く。
と、ごとんっ!とすごい音がした。
どうも向こうも僕が住んでいることに慣れてないのか、ドアが開いた音に驚いたらしい。

「大丈夫?」

と聞くと、慌てた表情で彼女が言った。

「カメラが……。」

見ると彼女の足元にデジカメが落ちている。
彼女はばっと拾い上げると電源を入れようとした。

「……つかない。どうしよ……!ねぇ!」

珍しく彼女が動揺している。
その姿が妙におかしくて少しにやけてしまう。

「あー、新しいの買う?
最近のは性能上がってるらしいから、そんなのより綺麗なの撮れると思うよ。
……それよりそんな慌てるなんて珍しいね。」

最後まで言い終えて彼女の方を向いた時に、初めて彼女がこちらを睨んでいることに気がついた。

唖然としていると大股でこちらに近づく。

「そんなの……?
祐介にとってはどうでもいいのかもしれないけど、私にとっては……っ!」

すごい剣幕だった。
こんなこと今までになかった。

「でも、そのカメラ最近あんまり使ってなかったし……」

混乱した僕が必死に言い訳をすると、彼女は黙って僕を睨んだ。

「……なんなんだよ。
カメラ壊したのは海鈴でしょ!
なんで僕が責められるんだ!」

訳がわからなかった。
そもそもそのカメラがなんなのかなんて覚えてなかった。
なんかのタイミングで買っただけのカメラを、新しいの買うか、と提案しただけでなんで責められなきゃいけないんだ。

彼女に背を向け、玄関に向けて走り出す。
丁寧に並んでいる2足の靴のうち、僕の方を乱暴に履こうとする。

……上手く履けない。

「ああ、もう!」

自然と声が出た。
僕自身も、僕のこの溢れる気持ちがなんなのかよくわからなかった。

踵を潰して立ち上がる。
そして乱暴に玄関を開け放つと、全力で走り出したのだった。





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2/5/2023, 1:21:07 PM