(権力者が集団だとバレた上に演奏者が元天使だと分からされた後)
「⋯⋯要するに演奏者くんは天使様として生きてたのにわざわざこの世界に来て、理をねじ曲げたからって怒られたからってブチ切れて帰ってないの?」
「いや、堕天させられたよ」
「だ、だてん⋯⋯?」
「ん⋯⋯天使じゃなくなったって感じ」
「へぇ、じゃあ今の君は何」
「あくま?」
「あ、あ、あ、あくま!?!?!?!?」
「うん、あくま」
天使がだてん⋯⋯? とやらをすると、悪魔になるの? やばいな、すごい、真逆じゃん。
「それにしても、天使のままで生きてた世界もあったかもしれないんだ」
「それは、そうだけど」
「その世界はさ、なくなっちゃったわけじゃん? 天使の仲間とかと楽しく過ごしたはずの時間も失われちゃったんでしょ? 悲しくないわけ?」
「いや、ぜんぜん。楽しくなかったし」
本当に思っているんだろうな、みたいな顔でサラッと言ってのける演奏者くんに少しだけ戸惑う。
「⋯⋯ホントに?」
「本当に。それに、天使のままだったらきみに出会えなかったからね」
本気でボクのことが好きならしい、この男は。
でも、ダメなのだ。
ボクは権力者の中でもめちゃくちゃ下っ端で、例えば演奏者くんなんかと協力する素振りを見せただけで簡単に首が吹っ飛ぶようなそんな立ち位置なのだ。
だから、ボクと付き合う世界だって『失われた世界』のひとつに含まれるっていうのに、演奏者くんは全く考えてないらしい。
まぁ、ボクがもうとっくに演奏者くんのことが好き、なんてバレなきゃ言いから簡単だと思うけどね。
5/13/2024, 3:52:40 PM