架空体

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【見知らぬ街】

初めて降りた駅の空気は、少し冷たくて澄んでいた。
地図も持たず、ただ歩いてみる。

商店街の看板は聞いたことのない名前ばかりで、軒先の花の並べ方や、パン屋の甘い匂いまでもが新鮮に感じる。見知らぬ街というだけで、すべてが特別に光って見えるのだ。

やがて、小さな公園に出た。ベンチに座る老人が、こちらに気づいて微笑む。その一瞬、私は「ここに来た意味」を問われた気がした。答えは出ない。ただ、知らない場所で、知らない人に微笑まれることが、不思議と救いになる。

また歩き出す。次に訪れるときには、この街はもう「見知った街」になるだろう。

8/24/2025, 1:19:07 PM