セイ

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【繊細な花】

僕は一目惚れをした。
鋼の心を持つ自分とは真逆な、硝子でできた繊細な花のような心を持った年下の子に強く惹かれた。

僕は彼女を傷つけぬようにと1つ1つ丁寧に立ち回った。
彼女好みの「良い人」を演じ、少しずつ彼女の心を開かせた。
彼女の「嫌なこと」は僕が進んで引き受け、逆に「良いこと」は全て渡した。
要求が段々ヒートアップしても僕は何も言わず叶えた。

僕が守る。傷つかせない。壊させない。
そう決めた筈なのに、良かれと思ってした行動の全てが「繊細な花」を少しずつ壊していたことに愚かな僕は気づかなかった。

僕の惹かれた硝子のように透き通った美しい花はいつの間にかドス黒く濁りきった醜い花に変わり果てていた。

僕は「繊細な花だったモノ」から逃げ出した。
怖かったのだ。
別人かってぐらいヒトは変わってしまうことに。

すっかりトラウマになってしまった僕は「繊細な花」と関われなくなった。
最初から「ドス黒く濁りきった醜い花」と関わる方が気が楽だった。
「繊細な花」と違って何をしても壊れないし、適当な立ち回りでも何とかなる。

そんなことばかりしていた僕は他人を思いやれないクズになっていた。

「繊細な花」なんかと関わらなきゃ良かった。
そればかり考えた。

僕はあの時…繊細な花に惹かれた時、どうするのが正解だったのだろうか。

6/26/2024, 6:12:54 AM