白糸馨月

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お題『誰かしら?』

 在宅勤務をしていたある日のこと、ドアをノックする音が聞こえてきた。宅配便かな、それならインターホンを鳴らせばいいと思う。知り合いであれば事前に連絡があるはずだ。
 気持ち悪いし怖いので無視しているとふたたびドアをたたく音が聞こえてくる。
 ひょっとして私は近所迷惑になるようなことをしたのだろうか。それとも女性の一人暮らしを狙って家に押し入ろうとしているのだろうか。
 本当に怖くなって私はとりあえず武器になりそうな卵焼き用の小型のフライパンを持ち、ドアの小窓をのぞいた。
 そこには誰もいない。
 ほっとしてドアに背中を向けたのもつかの間、またドアをノックする音が聞こえる。
 意を決してついに扉を開ける。
「誰なんですか」
 すると、そこにいたのは青白い女の姿だった。お互いに叫んだと思う。その女はすぐさま非常口のドアを開けて階段を降りていった。
 そういえば思い出す。しばらく隣の部屋がうるさかったことを。カップルの口論が絶えなくて、ある時別れたのか二人とも出ていってしまったことを。その青白い女の姿はどことなくカップルの片割れにそっくりだった。
 私は恐ろしくなっていったん扉を閉めた後、棚から塩を持ち出してなんとなく自分の部屋の周辺にばらまき始めた。

3/3/2025, 3:42:21 AM