幕 間 そして、妃は火蓋を切った
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「凡その見当はついていましたが、ジュファ様の命を狙ったのは帝で間違いないようです」
「取り敢えず、お命頂戴してきます」
「落ち着きなさいお馬鹿」
今にも笑顔で人一人葬ってきそうな殺気を放つお馬鹿の頭を撫でる。これが忠犬なら、存分に尻尾を振っていると思うくらいには、それだけで機嫌はよくなった。
「ジュファ様も見当が付いていたみたいですが、一体何をやらかしたんですか」
「あら。私のせいにするの?」
「それで間違いはないと思うので」
「失礼しちゃうわね」
ただ、あんたの命を狙っている輩がいるから精々気を付けておくことねと。わざわざ予言の巫女が、有り難いお言葉を言ってあげただけなのに。
「帝が消えるにしろそうでないにしろ、内情や弱みを知りすぎているジュファ様は、真っ先に狙われるでしょうね」
「そう仕向けたんだから問題ないわ」
「どうしてわざわざ危険を犯すようなことをするんですか!」
「奇襲って、言葉は嫌いじゃないけど、ちょっと面倒じゃない」
相手の間抜けな面は拝めるかもしれないが、その間に乗じて蜥蜴の尻尾切りをされてしまっては元も子もない。
「どうせなら、芋蔓式で一気に全員ヤりたいじゃない?」
「なんか、ちょっと“ヤ”が怖いんですけど」
「つくづく、味方でよかったなと思いますよ」
「奇遇ね。私もよ」
前以て、言っておいたでしょう。
「さあ。愛と平和を守るため、悪い奴らをやっつけるわよ」
「……僕だけかな。この上ないほど正しい台詞なはずなのに、全然似合ってない気がするのは」
「完全に悪者顔だからじゃない? おかげで今にもこの世の終わりになりそう」
「あら。お望みとあらばさせてもらうけど」
「「遠慮しておきます」」
これは、やられたら気の済むまでやり返す、破天荒女の話なのだとねえ。
#愛と平和/和風ファンタジー/気まぐれ更新
3/10/2024, 3:09:49 PM