お題『麦わら帽子』
主様が13歳の夏は水の都・ヴェリスに来ている。貴族の依頼で祭りの警備のためにデビルズパレス一同でやって来たのだけれど、道中主様はずっと不安そうだった。
「畑の野菜、大丈夫かな? 留守中にちゃんと水遣りしてもらえるって本当に信じていいの?」
「はい、大丈夫ですよ。屋敷の世話をしてくれるようグロバナー家にはきちんと話を通していますから」
「でも、アモンのお庭は……」
「そちらもきちんと頼んでいますから大丈夫です」
「だけど貴族との約束だなんて……」
このやりとりを何度しただろうか? 主様は本当に貴族のことが好きではなく、全然信頼もしていないらしい。まぁ、今までが今までだっただけに、貴族への心象が言い訳はないのだけれど。
「それよりも主様。そろそろヴェリスに到着いたしますよ。ヴェリスに着いたら真っ先に日焼け止めクリームを塗りますからね。あと、麦わら帽子もお忘れなく」
麦わら帽子と聞いて、お顔の色がパッと晴れた。
「うん、海だもんね。紫外線から目を守るためにもツバの広い帽子は欠かせないんだよね?」
「はい、その通りです」
そう、主様は13歳にして初の海辺の旅だ。仕事2割くらいで、あとはめいっぱい楽しんでいただかなくては。
8/11/2023, 11:56:41 AM