たつみ暁

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「誤字ってるよ」
彼は深々とため息をつきながら、私の書いた原稿の束を差し出した。
「『終わり、また初まる、』じゃあない。『初』は初めてのこととか最初のことに使う字。ここは『始まる』が正しい」
さすが、国語教師の指摘は的確だ。
「小説書く前に小学生からやり直したほうが良くない?」
この、令和の時代には私がパワハラと訴えたら通りそうな、キツい言い方さえ無ければ、最高の指導者なんだが。顔はいいんだから、性格直したらどうですか。
あれ、性格は『直す』もの? 『治す』もの?
「まーた自分の世界に入ってるね?」
原稿をびろびろ振りながら、彼は眼鏡の奥の目を細める。
「君の想像力は買ってるんだから、もっと基礎力を上げなさい。そうすれば、妥当な年齢になった時、賞は勝手に転がり込んでくる」
褒めるのか、けなすのか。
どっちかにしてくれませんかね?

2025/03/12 お題「終わり、また初まる、」

3/12/2025, 10:19:08 AM