死んだ覚えはないんだけど、目が覚めたらゲームの世界に転生していた
かなり思い入れの深いゲームの世界に
ただ、元の世界での生活があったので、嬉しいという感覚は殆どなかった
いや、ちょっとはあったけど、誤差範囲
それでも、好きなキャラクターたちに囲まれるのは、たしかに気分がいい
優しいキャラばかりだし、明確な敵キャラとも、和解で終わるゲームだったから
モンスター的なやつとの戦いがメインだしね
さて、突如主人公たちが住む拠点に現れた私は、ごまかさずに事情を説明した
みんな驚きつつも、私の言うことを信じてくれて、やっぱりいい人たちだとホッと胸をなでおろす
ちなみにこのゲーム、プレイヤーは異世界から介入する指揮官という設定で、キャラからは姿は見えず、宙に浮く小型ロボットから声が聞こえている、という設定だ
プレイしていた時の指揮官は当然私
が、しかし
今、私はこの世界にいるので、指揮官(=プレイヤー)は別人
そもそも喋り方も声も違う
この指揮官はいったい誰なんだろう?
どっかで聞いたことあるような
ま、どうでもいいか
しばらくして、私にも戦いの適性があったらしく、一緒にモンスターを倒すことになった
危険な仕事だけど、なかなか充実している
みんなと過ごす日々が楽しいからだと思う
ただ、奇妙に感じていることがあって
最初はちょっとした違和感だった
物語の順番が前後したのだ
そういうことがちょくちょくあって、私が介入したせいかも、なんて軽く考えていたんだけど、いよいよ無視できない異変が現れた
知らない物語が始まったのだ
物語自体はゲーム時代と変わらないノリ
バトルもののゲームだとは思えないほど、明るく、コメディタッチのやりとりが続く
でもその内容は、全くの未知
知らない設定がポンポン出てくる
ちょっとこれ大丈夫なの?
なんて心配をしていたら、ある日、指揮官にひとりだけで呼び出された
この世界について話したいらしい
『私は、このゲームのシナリオ担当です
知ってますか?』
どこかで聞いたことがあると思ったら、生配信とかにも出演していたシナリオ担当の方だった
まさか指揮官をやっていたなんて
『実はゲームを起動したら、私の知らないクロスアが始まりまして
驚きながらもプレイしたら、キャラと直接会話できたり、覚えのない物語が展開されて、さらに驚きました』
クロスアというのは、このゲームの略称だ
『まあ、あなたが現実世界から来たと聞いた時には、理解が追いつかず頭が痛くなりましたけど』
シナリオ担当の指揮官によると、ここは元のゲームとは別の運命をたどる似て非なる世界
つまり、パラレルワールドではないかとのことだった
指揮官はとりあえずクリアを目指すらしい
私もクリアすれば元の世界に戻れる気がする
先に断っておくと、このあとなぜゲームの世界に私が転生することになったのかとか、パラレルワールドの正体は?とか、そんなのは明かされることはなく
私としてもそのあたりはどうでもよかったので、登場人物としての日々を楽しんだ
指揮官も楽しんで、細かいことは気にしてなかった
私たちにとって重要なのはただひとつ
未知の物語を楽しみ、新たな設定の数々を解き明かすこと
シナリオ担当ですら知らない物語を一緒に体験する
ものすごくワクワクした!
この世界は私にとってご褒美なので、元の世界へ帰るその日まで、存分に楽しんだのだった
帰る時は指揮官ともども泣いたよね
生涯忘れることはない、とても素晴らしい日々だった……!
9/25/2025, 11:41:28 AM