Ino.

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 黄昏の涼風が心地良く、君の影法師が薄くなる。
 二人だけの世界。二人だけの静寂で、君の頬に一筋の涙が伝う。

「ねえ。もしもこの世界が、綺麗なものだけでできていたなら……こんなことにはならなかったのかな。」

 沈黙を破り発せられた君の呟きに、私は一瞬目を瞬かせた後、落ち着いた口調で言葉を返す。

「……綺麗なものは、汚いものがなければ輝けない。綺麗なだけの世界なんて、きっとどこにもない。もう、どうしようもないんだよ。」

「……そっか。」

 再び訪れる静寂。橙の空は小さくなっていき、未だ青っぽい空に星が瞬く。

「……陽、沈んじゃったね。」

「……だね。これから、どうすればいいんだろう」

「さあ、分からない。……とりあえず、やれることをやるしかないでしょ。」


 廃墟街にはずっと、二人の声しか聞こえない。

6/9/2025, 2:52:12 PM