白眼野 りゅー

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「この服、君に似合うと思うなあ」

 と、君が僕に言うとき、君の瞳は僕じゃない誰かを見つめている。


【すれ違う二対の瞳】


「黒系の服ってあんまり着ないなあ」
「嘘ぉ。その顔立ちなら絶対似合うってぇ」

 「その顔立ちなら」。君が僕の背後に見ている、僕じゃない誰か。僕の知らない、君が本当に好きな誰かとよく似ている、この顔立ちなら。

「迷惑じゃなければ私が買ってプレゼントするよ?」

 まっすぐに僕の顔を見て、君は言う。こういうとき、僕は僕の体がまるで幽霊みたいに透明になって、君の瞳に映っていない、なんて妄想をする。

「……いいよ、僕もこういう服、着てみたいと思ってたし。自分で買う」
「君のそういう優しいとこ、大好きっ!」

 と、「僕に向かって」笑いかけてくれる、君の幻影を瞳に映す。

5/5/2025, 4:26:21 AM