『未来』
ほんの少しだけ未来が見えることがある、と昼休みに友人に打ち明けた。購買で買ったサンドイッチの包装と格闘しながら友人が尋ねてくる。
「見えるときもあるし、見えないときもあるってこと?」
「そう」
「へぇ~」
コンビニで買った5個入り薄皮あんぱんの包装を破っているさなかに突然に訪れた見えるときの前触れ。気づいて意識をやると、友人の持つサンドイッチの具がこぼれる場面が見えた。はっと意識を戻してとっさに手を伸ばすと地面に落ちるはずだったハムやゆでたまごが手のひらに乗ったが、自分の持っていたあんぱんがひとつ地面に転がってしまった。
「あぁ……」
「あー」
未来が見えたことで手に乗ったハムとゆでたまごを差し出すと、友人は悩んだ末につまんで食べた。
「その能力、磨いてもっと役に立てられるといいね」
拭いた手のひらの上に慰めのように友人のカバンから探り出されたキャンディがひとつ置かれる。
「ありがと。……がんばる」
打ち明ける前と変わらない接し方の友人に信頼感を覚えながら、奇しくも4個になってしまったあんぱんに手を伸ばした。
6/18/2024, 4:10:51 AM