つぶて

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明日世界が終わるなら

先か、後か。
最後の選択は、ほんの小さなことだった。
進学、入試、就職、結婚、転居…。これまでの選択と比べたら、その先に待つ結果は数分の違いでしかない。
深海のように静まり返った寝室。琥珀色の液体を眺めていた。これから私を殺す毒薬は、月の光を湛えていて美しかった。
あなたの匂いを抱いて、私は眠りにつく。
左腕に小さな痛み。冷たい何かが体に染みていく。
同じ音がもう一つ。あなたが隣にやってくる。
そっと目を開けると、陽だまりのようなまなざしがあった。柔らかに微笑むあなた。安らぎが心を満たし、私は目を閉じる。
私は先がよかった。あなたは後が良かった。それだけのこと。言葉にしなくても、こうなることはわかった。
君は寂しがりだからね、と笑ったあなたを思い出していた。記憶の中のあなたは、いつも光に照らされていて温かかった。今も、昔も。これからもきっとそうなのだろう。
眠りに落ちていく。もう何も思い出す必要はなかった。この温もりのほかには何もいらないのだから。

5/7/2024, 9:36:26 AM