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heart to heart

 カーテンで遮られた朝の日差しが微かに部屋に入ってくる。外は清々しいほどの青空で絶好のさんぼ日和だ。それができるようになるのは何年後なのか、考えるだけで気が遠くなりそうだった。
 私が作った目玉焼きをかじりながら夫が何か言葉を吐いてる。その言葉は私の耳を通り過ぎていく。理解しようとする方がアホらしい。
 隅っこでまだ歩けもしない赤ん坊が喚きだした。うんざりする気持ちを押し込んであやしにいく。私は今日ほとんど寝てなかった。

「おい、早く泣き止ませろ」

夫が偉そうに言う。私の心の中の何かにひびが入った気がした。

「朝から鬱陶しくてしょうがねえよ」

軽く舌打ちするのが聞こえた。

「わかったような口聞かないで!」

完全に私の心は真っ二つに割れてしまった。私の突然の罵声に驚いた夫はキョトンとしている。溜めてた鬱憤を晴らすように私は言葉を続けた。

「あなたには感謝してるわよ。働いてお金を稼いでくれてるしあなたのおかげで私たちは暮らせてる。でも私だって、子育てと家事を両立してる。私だって一杯一杯なの。それなのになんなのあなたは。元々性格はいい方じゃないと思ってたけど子育てぐらい手伝ってくれると思ってた。なのにあなたは帰ったら酒を飲んで会社の愚痴を散々言うわ、朝も文句ばかり言うわで嫌になる。私だって私だって……」

これ以上は言えなかった。私の言葉でどんどん小さくなっていった夫は今ではミニチュアサイズに見える。

「それで言うなら…」

「何よ?」

怒り気味に私は言った。

「ごめん、悪かった。この頃、君はもちろん子供の世話が大変な思いをしてると思う。一日中側から離れずずっと見守ってるんだ。そりゃ並大抵の精神力じゃ無理だろう。だからこそ僕も協力しなきゃならなかったんだな。すまない」 

本当に反省している顔だ。

「それだけじゃないでしょ」

私は最初の夫の言葉が気になってた。夫は俯いたままだ。

「こんな時に言いにくいんだけど、ご飯もっと愛を込めて作ってくれないかな、なんて。忙しいのはわかるけど最近ひどいと言うか手抜きと言うか」

私の顔を覗き込むように夫が見てくる。それに関しては反論できなかった。確かに最近、ご飯は冷凍食品とかデリバリーを頼んでいる。
 しかし腹が立つ。きれいにカウンターを食らって何にも変えられない悔しさが込み上げてくる。なにか反論の余地はないかと探すがさっき一斉に言ったので何も出てこない。
 
「ごめんなさい。次からはちゃんと作るよにする」

「僕も手伝うようにするよ」

私の割れたハートは着々ト修復していってる気がした。





2/5/2025, 2:58:32 PM