『君に会いたくて』
どうにかして、「運命の人」とやらに会ってみたいと思いました。
運命の人というのは、多分顔立ちが整っていて、私に優しい性格で、頭からつま先までの全てが私好みである、という意味だと思うのです。
私は森の奥にずっと引きこもっている魔女でした。
先代の魔女に拾われてこの森の中の家で育てられて、100年だか200年だか、分かりませんがとにかくそれくらい経ちました。
先代はとっくの昔に亡くなり、私も薬を卸に行くか魔女集会に行くしか外出する機会はありませんでした。
「……ヒマ、というやつかもしれない」
毎日同じような作業をし続けるのは楽しくはありましたが、同時に体が覚えてしまって、別のことを考える隙間になってしまっていました。
ヒマ。
このヒマをどうにか解消したくて、そういえば人間は群れで暮らすんだっけ、昔読んだ絵本に「運命の人」と幸せに暮らすって書いてあったなと思って、なら作ろうと決心しました。
うじゃうじゃいる人間の中から「運命の人」を見つけるのはとても難しいことだと思ったのです。
それなら、自分の裁量で作った方が簡単だと。
そう思ったのです。
20年ほど費やして、とうとう私の「運命の人」が完成しました。
顔立ちの整った、優しい性格の「人」です。
彼は私によく尽くしてくれました。
私がやりたくないなと思った仕事も、家事も、なんでもやってくれるのです。
甘いマスクの彼。
優しく働き者の彼。
とても穏やかな日々が続きました。
なんだか違うな、と思いました。
彼はなんでもしてくれます。
でも、なんというか単調で、穏やかすぎるのです。
彼を私好みに調整しすぎたせいで、彼には隙やちょっとしたギャップみたいなものが存在しなくなり、ただの道具に成り下がってしまいました。
私好みの顔で、私好みのセリフを吐く、完璧な都合のいい存在。
人間とは、もっと揺らぎのある存在ではなかったでしょうか。
ふとした時に見えるいつもと違う顔なんかに惚れ直す、と雑誌で読みましたから、そういうのを期待していましたが、彼はあくまでも完璧でした。
「間違えちゃったな、次はゆとりを作るか。」
次はなんだか上手くいく気がします。
実験は失敗してこそです。
初めの子は失敗してしまいましたが、少し改良すれば私の「運命の人」になってくれる気がします。
「運命の人に、早く会いたいなぁ」
1/19/2026, 11:52:56 PM