わをん

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『奇跡をもう一度』

月の無い空を窓から覗いては星がひとつ降るたびにふたりで小さくはしゃいでいた夜があった。その興奮からなかなか寝付けなくなって空が明るみ始めた頃に寝入ってしまった私は次の日の朝に慌ただしく母に起こされても夢か現か分からないままに時を過ごした。
あのとき一緒にいた子は誰だったのだろう。ひとりっ子の私に弟妹は増えることなく、月がいくつも欠けては満ちてこどもだった私は大人になった。あの頃の私に近いぐらいの齢のわが子は今夜流星群が訪れるというニュースに目を輝かせてまだ明るい窓の外を見ては早く暗くならないかとしきりに気にしている。
今夜は新月。こどもを寝かしつけるつもりが寝入ってしまい、目を覚ました私が見た光景は窓辺から空を見つめるわが子と見知らぬこども。星がひとつ流れるたびに小さなふたりは小さくはしゃいで次に星が降るのを今か今かと待ちかねていた。あのとき一緒にいた子だ。振り返ったその子は星のように微笑んで手招きをした。

10/3/2024, 3:13:24 AM