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窓から見える、晴れ渡った空に浮かぶ雲。
少し視線を下にずらせば、わらわらとランドセルを背負った低学年の子が出てくるのが見える。

今は、6時間目だ。
黒板にはつらつらと白文字が並んでいる。細い棒を持った先生がこつこつと黒板を叩いているけれど、もごもごと口ごもっていて正直よく聞こえない。
お経みたいな先生の言葉は耳を右から左に通り抜けて、欠伸を呼ぶだけだった。

私はひとつあくびをすると、ノートへと目を落とす。
明日もし晴れたら、何をしようか。
近くの大きな公園を散歩するのもいいかもしれない、それとも親友の美咲とショッピングにでも行こうか。

最近できたというアイスのお店はいわゆる、映えというやつで、せっかくなら青空の元で写真も撮りたい。
それか、お母さんと一緒に庭の水やりもいいかも。愛犬のポチと一緒にドッグランに行ってもいいな。
想像はむくりむくりと膨らんで、思わず笑みがこぼれた。

その時だ、先生が私を当てたのは。

教科書すら違うページを見ていたのだ、当然、答えることができなかった。
くすくす、と周りの子たちが笑う声が聞こえる。

そんなこと言ったって授業がつまらないのが悪いのに、そう言いたい気持ちを抑えて私はしおしおと席に着く。
美咲と目が合った。気の毒そうな顔で小さく拳を握っている。
ドンマイ、ということなんだろう。
決めた、明日はやっぱり美咲とショッピングに行こう。
そして、先生のことをたっぷり愚痴ってやるんだから。

8/2/2024, 8:25:59 AM