今僕は自殺未遂で病院にいる。
自殺しようとして、家族が出かけた隙に
家に火をつけた。
その時僕を家から出してくれた人がいた。
その人は消防士ではなく、
近所に住むお兄ちゃんだった。
僕より酷い火傷を負ってしまっていた。
僕は分からなかった。
何故、自分が傷ついてまで、
死のうとしていた僕を助けようとしたのか。
僕からしたら死のうと思ってたのに、
邪魔しやがってとしか思わなかった。
その事はその日からちょうど一年後に
知ることになった。
あれから僕は近所のお兄ちゃんの行動が
分からなくて、モヤモヤして、
死ぬに死ねなくて、今日も生きている。
1年経った今でもよく分からない。
ふとあの時のことを思い出しながら
歩いていたら、なにか声がした。
僕はなにか聞こえるけど、まぁいいや
くらいにしか思わなかった。
その時クラクションが聞こえたと同時に
すごい衝撃を受けた。
でも、何故かあまり痛くない。
どうやら僕は信号が赤になっていることに
気づかず、車の前に飛び出していたようだ。
聞こえた声は教えてくれていたのだろう。
痛くなかったのは誰かが僕を助けてくれていたから。
その誰かの顔を見た時、ビックリした。
顔には大きな火傷の痕。
1年前僕の自殺を邪魔をした
近所のお兄ちゃんだった。
そのお兄ちゃんにお礼を言って
立ち去ろうとした時、名前を呼ばれた。
そのお兄ちゃんは僕のことを覚えていたのだ。
何故か流れで連絡を交換し、
数日後会うことになった。
待ち合わせ場所につき、お店に入り席に着くと
お兄ちゃんは唐突に
『俺はお前を助けたこと後悔していない。』
と言った。
僕は驚きと怒りが入り交じり、
声が出なかった。
お兄ちゃんは続けた。
『家の前の道ですれ違う度顔色が
どんどん悪くなる君を見て、
目が離せなくなった。
家族は気づいて無さそうだし、
俺が何とかしてやらなきゃって思った。
声をかけに行こうとした時、
お前の家から黒い煙が見えた。
その時は体が勝手に動いて…、
俺はお前に死んで欲しくなかった。』と。
俺は更に怒りが募る。
正直そんなのはお前が勝手にやったことで、
僕を救ってるつもりかもしれないが
それはありがた迷惑というやつだ。
僕は怒りを沈めながら話を聞いた。
そんな僕の顔を見てお兄ちゃんはこう言った。
『俺は1度お前に助けられたことがある』と。
僕はなんのことを
言ってるのか分からなかった。
助けた覚えなどないからだ。
お兄ちゃんは続けた。
『昔色んなことが上手くいかなくて、
公園のブランコに座って
どうやって死のうか考えてた時、
ある男の子が心配そうに声をかけてくれた。
俺は顔を上げてその子を見たら
ボロボロの制服をきて、
顔は傷まみれだった。
この子は自分が今すごく辛いのに
俺のことを心配してくれている。
そう思ったらその子がキラキラして見えた。
その日から俺はその子のようになりたいと
辛い思いしてるのは俺だけじゃないと
前を向けるようになった。
その子がお前だった。
だから、死のうとしているお前を見て
苦しかった。助けたいと思った。』と。
僕は驚きを隠せなかった。
僕にとっては、忘れてしまうような
些細なことでこの人は救われたんだ…。
そう思ったら、何だか心がすぅっとした。
僕は多分誰かの役に立ったり、
必要とされたかったんだと気づいた。
その日から僕は夢ができて、
前を向けるようになった。
今はあの会社も辞めて、
夢に向かって勉強中。
あの時のお兄ちゃんに感謝しながら
今日も僕は生きていく。
【1年後】
#60
6/24/2023, 2:19:26 PM