かさ

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※BL描写





 秋っぽいことがしたい。おっとりした口調で彼がそう呟いてすぐ、俺はインターネットの検索エンジンに「秋 デート」と打ち込んでいた。表示された検索結果から適当なリンクをタップし、記事を斜め読みする。
 食べ歩き、ピクニックなど、束の間の心地よい気候を楽しむ過ごし方がいくつか紹介されているが、それは春でもできるなと思い当たって、ふむ、と画面をスクロールする。1枚の写真が目にとまった。こんもりとした山々が赤く色づき、いかにも風情のある景色だった。

「ね、こんなの見に行かない?」

 彼の肩を寄せ、スマートフォンの画面を見せる。彼は顔をほころばせて頷いた。

「ええな、綺麗」

 この人と紅葉を眺めて、和服なんか着てもらっちゃったりして。おねだりすれば、初めは恥ずかしがって嫌がるだろうけど、彼は俺に甘いから許してくれるかもしれない。きっと似合う。

「でも、ええの?」
「なにが?」
「もみじ、食べれへんで」

 不思議そうな表情とともにそう言われて、おれはすっかり拍子抜けしてしまった。俺、そんな食いしんぼだと思われてる?

「知ってるよ」
「お腹空かへん?」

 からかっているのかと思いきや、彼は至って真剣にこちらの空腹を心配してくれているようだった。それに気づいたら、目の前のこの人が愛おしくてかわいらしくてどうにもできなくて、がばりと抱きついてしまった。

「なになに」

 そう言いつつも、抱きとめてくれる彼。なんだか甘えたい。デート楽しみだね。大好き。そんな気持ちを込めて、ぐりぐりと額を肩のあたりに押し付けた。

10/7/2025, 4:02:21 AM