#4 愛を注いで
人の心は、よくコップに例えられる。愛を入れる器。大きければ大きいほど、たくさんの愛を、あますことなく受け取ることができる。
そうして愛で満ちた大きなコップを持つ人は、たくさんの愛を、他の人にも注ぐことができるようになるのだ。
でも、僕のコップは小さい。
暗いところから連れ出してくれたあの人が、毎日毎日僕のコップに愛を注いでくれる。たくさん、たくさん、抱えきれないくらいに注がれて、空っぽだった小さなコップは、すぐにいっぱいになってしまった。
「やめて!」
ぎゅうと、心の中のコップを抱え込む。なみなみになったコップはもう愛が入る隙間なんてなくて、注がれるそばから溢れてしまう。せっかく貰ったのに、僕のコップは小さくて、たくさんの愛を受け取れない。溢れてしまうのが悲しくて、怖くて、申し訳なくて、涙が出てしまう。
もういいよ、勿体無いよ。そんなに勢いよく注がれたら、溜まった愛も溢れて無くなっちゃう。
震えてそう身を固くした僕に、たくさんの愛を持ったあの人は、優しく笑った。
「じゃあ、きみのコップの中身を誰かのコップに注いであげて。その分、きみにたくさん愛を注ぐよ」
12/13/2023, 3:06:30 PM