「朝食を作ってみました。起きてください」掛け布団を剥ぎ取られ猛烈に体を揺すられ、突然嵐の中に叩き込まれたのかと寝ぼける頭に声が届く。やたらキラキラしい目でこちらを見るその人は僕が体を起こしたくらいじゃ満足しなかったのか、今度は腕を掴んでぐいぐいと引っ張った。「冷めないうちに食べましょう」こうなっては否と言っても聞く耳を持たないと経験上わかっているので、大人しく従った。小さなダイニングテーブルには二人分の朝食が綺麗に並ぶ。定位置である僕の席にある目玉焼きは歪ながらも目玉焼きの体をなしていたが、対面にある目玉焼きは……目玉がなかった。「あ、先に顔洗ってください!」浮ついた声に背中を押され、洗面所に足を向けた。
// 小さな愛
6/25/2025, 8:46:32 PM